岐聖大通信Vol24

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junior college短期大学部自由研究?i n t e r v i e w夕方の夕子ちゃんだった私は保健室で自信を取り戻しました。私の教育観の原点は、子ども時代の学校体験にあります。養護教諭になってから気づいたのですが、実は....

junior college短期大学部自由研究?i n t e r v i e w夕方の夕子ちゃんだった私は保健室で自信を取り戻しました。私の教育観の原点は、子ども時代の学校体験にあります。養護教諭になってから気づいたのですが、実は私は、どうやら軽度のLD(空間認知の学習障がい)とADHD(注意欠陥多動性障がい)という発達の偏りを持っていたようです。小学生の頃は担任の先生や周囲に「夕方の夕子ちゃん(優秀な優子ではなく)」と呼ばれていました。放課後、いつも居残りで補習授業を受けていたからです(笑)。中学生の頃は勉強に集中できなかったり、どんなに頑張っても些細なミスを繰り返してしまう自分が嫌で、よく保健室に逃げていました。そんな私をまるで母と同じようにあたたかく受け入れ、かつ「あなたは劣っているわけではない、あなたにしかない個性がある」と認めてくれたのが養護の先生でした。「だれにも長所がある」「みんなと同じでなくてもいい」という価値観を与えてくれた先生との出会いが、私の人生を変えたのです。養護教諭は日本特有の職制。理論化・体系化が急務です。大学でもすばらしい恩師との出会いがあり、晴れて憧れの養護教諭になった私は、静岡県の公立小中学校で23年間お世話になりました。心身にさまざまな健康課題を持った児童・生徒が訪れる保健室は、いわば子どもたちの総合心療内科です。子どもの訴えの多くは家庭問題や友だちとの関係、学業不振、体の変化といった思春期特有の悩みによる一過性の不調なのですが、時に言葉にはできない不安やイライラが何故起こっているのか、自身のことがよく分かっていない子どもも少なくありません。養護教諭は子どもたちと日常生活を共にする中で、ノックの仕方、扉の開け方、座り方など、何気ない仕草や表情から察する〝勘?のようなものが働き、保護者や心や体に関する専門職ですら気づかない統合失調症、うつ病などの精神疾患の前駆症状や発達障がい、虐待による後遺症などを早期に発見することがあります。つまり、養護教諭は学校において、子どもたちが発する心身の健康課題のサインをいち早くキャッチし、顕在化した問題のみならず潜在的に持つ子どもの健康課題に対して教育的な視点でケアできる存在なのです。ところが養護教諭は世界に類をみない日本の学校文化が生んだ特有の職域(※欧米にはスクールナースが存在するが、教育職員ではない)を持つということもあって、現在のところ、養護教諭の〝勘?は十分に理論化・体系化されていないのが実状です。養護教諭は健康に関する知識に加え、観察力、判断力、カウンセリング能力、マネジメント能力といった高度な専門性とスキルが求められる職業であるにもかかわらず、学問体系が十分に確立されていません。「そこを解明すれば、養護教諭全体のボトムアップにつながるし、現在さまざまな健康課題に苦しむ子どもたちをもっと早くに支援できるのではないか」。そのような思いが強くなった私は、長年愛着を持って働いた保健室の現場を離れ、研究者の道に進むことを選びました。そして2011年4月から、縁あって本学短期大学部の養護教諭コースで教鞭をとっているわけです。ちなみに、日本で最初の養護教諭は岐阜市の旧京町小学校に配置された廣瀬ますさんという方で、奇しくも2011年が職制70周年。運命の巡り合わせのようなものを感じずにはいられません。「認めてもらう喜び」がすべての人の成長のきっかけに。最後に、私が好きなアン・サリバン先生(※幼くして病魔に視力と聴力、ことばを奪われたヘレン・ケラーの家庭教師。献身的な指導により、ヘレンの才能を引き出した)の言葉をみなさんにお届けしましょう。「教育技術は関係性の中で生まれる」。学校、家庭、職場、地域社会、すべての場面における「教育」の根幹は愛情です。相手に寄り添い、優れたところを認め、必要な時にそっと手を差し伸べる。年齢に関わらず、そんな営みの繰り返しが相手の個性を伸ばし、また自らの個性をも伸ばしてくれるのです。夢を話してくれる人がいたら、「そんなのムリに決まってるじゃん」などと言わず、応援してあげてください。なでしこジャパンの澤選手が言っているように、夢ってやっぱり見るものじゃなく、叶えるもの。一生懸命努力を続ければ、自然と支援者が増えていき、必要な情報も集まって、かならず実現に向かいます。可能性を否定したり、限界を作ったりしないこと。〝夕方の夕子ちゃん?だった私がたくさんの方から教えていただいた大切な考え方です。そして今、それを未来ある学生たちに伝えることが私に与えられた使命であり、世の中にお返ししていくことだと思っています。養護教諭の理論的な体系化、そして志ある学生たちへの指導に奮闘中です。鎌塚優子短期大学部准教授かまづかゆうこ““2011年度から本学の短期大学部准教授として、養護教諭を目指す学生たちを指導されている鎌塚先生。23年間におよぶ現場経験、そして自らもかつて養護教諭に支えられて成長した経験にもとづく講義は、論理的で説得力に満ちた内容です。先生の教育に対する思いや考え方を伺いました。09