岐聖大通信Vol24

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?i n t e r v i e w経済情報学部自由研究economicinformation神経科学と経済学が融合した新学問領域「神経経済学」。伝統的な経済学は、合理的かつ理性的に行動する存在であることを前提にしています。常に正確な情....

?i n t e r v i e w経済情報学部自由研究economicinformation神経科学と経済学が融合した新学問領域「神経経済学」。伝統的な経済学は、合理的かつ理性的に行動する存在であることを前提にしています。常に正確な情報を収集し、冷静沈着に自分の損得を計算して、寸分の判断ミスもなく答えを出すという。ですから、たとえばバブル景気や金融危機のような〝論理的にあり得ない?経済現象を説明することは非常に困難でした。対して、人間の経済行動を心理学的側面から分析しようとするのが「行動経済学」です。そもそも人間はそれほど単純な生き物ではありません。「他と比べて時給は低いけれど、職場の雰囲気が楽しそうだったからこのアルバイトを始めた」など、利益以外のインセンティブを優先して行動を選択した経験は誰にもあるでしょう。つまり「人間は感情や直感といった心のはたらきを重視して、非合理な判断もしてしまう」ものであり、逆に言えば、人間の心理状態を分析することによって各経済主体(家計・企業・政府など)の動向予測が可能になるのです。そして私が研究している「神経経済学」は、そこからさらに一歩踏み込んで、人間の経済行動と感情、それを司る脳の働きを体系的に探ろうとするもの。「神経科学」と「経済学」とをあわせた新語で、1990年代から注目されるようになってきた新しい学問領域です。不確実性の高い経済行動には脳がブレーキをかける。神経経済学では脳波計やfMRI(機能的磁気共鳴画像装置)などを使って、人間の経済行動における心理的・生理的プロセスを科学的に解明します。たとえば、みなさんは「当たりの確率が分からないあいまいなくじ」と「当たりの確率が分かるくじ」のうち、どちらを選びますか。実はデータをとれば明白で、人間は「当たりの確率が分かるくじ」を好む性向があることが分かります。前者の「あいまいなくじ」のほうが当たりの確率が高いかもしれないのに、です。このときfMRIを分析すると、あいまいなくじを避けた人の脳は「なんとなく不安でいやな感情」を司る「扁桃体」が強く活性化しているんですね。こうして、人間の経済行動の選択は感情に左右されうることが科学的に理論づけられます。もちろん、脳の仕組みというのはとても複雑なので、他にもさまざまな条件・手法によって検証を重ねていくわけですが、脳の動きと心理的な動きの関連を明らかにする神経経済学の意義は、行動経済学の基礎づけが行えること。同時に多くの新しい知見が得られ、マーケティングをはじめとするビジネス領域への応用も期待できます。今日、情報化やグローバル化、環境問題といった諸要因が複雑に重なり合うなかで、経済学は新たな課題に直面しています。でも、経済学の根幹というのはいつの時代も非常にシンプルで、「幸福について考えること」なんですよ。今、そしてこれから、どんな風に暮らせば私たちは幸福になれるのか。少しでも興味を持った方はぜひ経済学をひも解いてみてください。ヒトは勘定で動くにあらず、感情で動く。その経済行動を脳機能解析などの神経科学の見地から探究。2002年のダニエル・カーネマン氏のノーベル経済学賞受賞によって、一躍注目を集めた「行動経済学」。そして、そこから派生した「神経経済学」は近年の解析手法の進展に伴い、躍進している最先端の学問分野です。まさに旬な神経経済学を専門とされている松葉先生の研究室を訪ねました。””▲バスケットボールのパスの回数を数えているとゴリラが登場していることに気づかない…。人は集中時、他のものを見落としがちになるという、情報の認識と利用の困難性を示す「見えないゴリラ」実験の呈示動画。松葉敬文経済情報学部准教授まつばたかふみ08